モナムール

解離性同一性障害が、寛解するまでの独り言

一夜の物語

深い深い森に囲まれるように崩れかけの城がある。

昔はさぞや立派な城だったのだろう。

塔の上で真っ暗な鴉の群れが敬礼する。

剥き出しの城内。

玉座にそっと置かれた王冠に枯れた葉がひらりと落ちる。

迷い込んだ少女は透き通り陽の光を受けてきらきらと輝く泉にて喉を潤しながら空を見上げた。

深い哀しみを湛えた瞳は去りゆく鴉の群れが夜が迫り行く空の彼方に消えていくのをじっと眺めていた。


やがて夜が訪れた。欠けた月が輝く。


もはや私は満たされませぬ。

閉じた瞼から光の雫を零しながら語る。


少女はそっと手を光に濡らしながら耳を傾けてます。


かつての満たされたまんまるのお月さま。


一人の民の死を始まりに徐々に滅びていく国と欠けていくお月さま!


ああ。お願いです!少女よ!

ああ。最後の民よ!


この国も崩れかけの城も綺麗な泉もあらゆる全てを暗闇に隠してくださいまし。


無数の魂は未だに静寂が訪れないのです。


恥ずかしくて涙をはらはらと流すことさえできずにいるのです。


少女は泣きました。

泣き叫びました。

夜の仮面が剥がれ落ちました。


鴉は春の訪れと共にこの場所にやってきましたけど、まるで夢か幻のように何もかもが跡形もなく消えていたのでした。


もう二度と!

もう二度と!