散歩
夜明け近くに川に行った。
歩いて数十分。
僕は、何も考えずに歩く。
深いところでは、何かを考えてるのかもしれない。
夜明けの気配に、胸が締め付けられる。
僕は手を伸ばして、指を鳴らす。
夜が来るように、願って。
しかし、何も変わらず。
扉の向こうの何かに笑われた気がした。
ふと、思う。
川に飛び込んだら、扉の向こうの何かに会えるだろうか、と。
考えること、数分。
ま、いいか、とまた歩き始める。
答えをまだ僕は知らないのだから。
パトカーを見た。
前に優しくしてくれた警察官は元気だろうか。
彼氏いるとか、身長高いねとか、お姉さん可愛いね、とか色々言われたことを思い出しながら、川に着く。
何も考えず、何も考えず、何も考えず、
僕は、ただ、ただ
朝日を見て、故郷を思い出した。
呑まれないように、指を鳴らす。
帰りにベンチに座るおじさんを見た。
お姉さん、朝から偉いねだって。
聞いてるようで、聞いてない。
だって、僕はあなたの虚ろな目に興味津々なのだから。
まったく、失礼なやつだ。